<産出プロセスのネットワークシステム>


オートポイエーシス・システムは反復的に作動を繰り返すシステムであり、その機構(メカニズム)を特徴づけるのは次のような規定です。

構成素が構成素を産出するという産出(変形及び破壊)過程のネットワークとして、有機的に構成(単位体として規定)されたシステムである
このとき構成素は、次のような特徴をもつ。

  1. 変換と相互作用をつうじて、自己を産出するプロセス(関係)のネットワークを、絶えず再生産し実現する。
  2. ネットワーク(システム)を空間に具体的な単位体として構成し、また空間内において構成素は、ネットワークが実現する位相的領域を特定することによってみずからが存在する。

この規定からオートポイエーシス・システムの機構が、3つの点で既存のシステム論と大きく異なっていることがわかります。

まず第一にオートポイエーシス論は産出プロセスを基本にしたシステム論であるという点です。そのため、空間内にイメージされる開放系の動的平衡システムや空間的形態を変えていく自己組織システムとは全く異なった機構となります。

第二に産出プロセスと構成素との関係を循環的に規定していることです。オートポイエーシス・システムは産出のプロセスが有機的に組織されたもので、構成素は産出のプロセスをつうじて産出され、他方、構成素は産出のプロセスのネットワークを絶えず産出します。
システムと構成素は産出関係によって、循環的に規定されるのです。

第三にオートポイエーシス・システムは、純粋に産出関係だけによって規定されており、その規定のなかには時間も空間も含まれていないため、空間内にシステムの実現を図っていかなければいけません。システムの実現とは構成素をつうじて産出のネットワークが空間内の位相領域を定め、構成素に応じた構造を形成することを意味します。

ちょっと一息!

マトウラーナとヴァレラはシステムの実現の機構を考えるにあたって、位相空間の導入を考案しました。従来のシステム論における空間概念の変更です。
システムは、みずからを産出するような構成素がどのようなものでも(物理的空間内に場所を占めるものでなくてもよい)、その構成素を利用してシステムは作動を開始し、その構成素をもとに空間内の構造を形成します。

コミュニケーションを産出するプロセスのネットワークが、コミュニケーションによって再生産され、反復的にコミュニケーションが産出されるのであれば、コミュニケーションを構成素とする「社会システム」となります。
また、「支払い」を産出する産出プロセスのネットワークが「支払い」によって再産出され、反復的に「支払い」が産出されるのであれば、「支払い」を構成素とする「経済システム」となります。

システムを位相学的に規定したことにより、オートポイエーシス論は応用領域を広げ、新たな一般システム論となりました。


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