リース取引の税務処理


平成19年度税制改正前は、ファイナンス・リース取引については、所有権移転条項付リース、割安購入権付リースや特別仕様のリース取引は、売買処理とされていました。
また、売買があったものとみなされるファイナンス・リース取引についても,売買処理が必要であるとされていました。
改正後は、新リース会計基準に整合性を図るために抜本的な見直しがされました。

所有権移転ファイナンス・リース取引   →  従来どおり売買処理

所有権移転外ファイナンス・リース取引  →  改正により売買処理に統一
                      (ただし、賃借料として損金経理した金額は償却費として損金経理したものとする)

オペレーティング・リース取引      →  従来どおり賃貸借処理

  1. 税務上のリース取引
    税務上のリース取引とは、資産の賃貸借(所有権が移転しない土地の賃貸借を除く)で次に掲げる要件に該当するものをいいます。

    • 当該賃貸借に係る契約が、賃貸借期間の中途においてその解除をすることができないものであることまたはこれに準ずるものであること(中途解約不能)

    • 当該賃貸借に係る賃借人が当該賃貸借に係る資産からもたらされる経済的な利益を享受することができ、かつ、当該資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものであること(フルペイアウト)

    税務上のリース取引の定義は、改正前と同様の内容であり、リース会計基準におけるファイナンス・リース取引に該当する要件と同様です。
    税務上も、売買処理が適用されるのはファイナンス・リース取引であって、オペレーティング・リース取引は、税務上のリース取引の対象外であり、従来どおり賃貸借処理が適用されます。
  2. 借手側の処理
    借手は、原則としてリース資産を売買によって取得したものとして処理しますが、リース資産についてはリース期間定額法によって減価償却を行います。

    リース期間定額法とは、リース資産の取得価額をリース期間の月数で除して計算した金額に当該事業年度におけるリース期間の月数を乗じて計算した金額を各事業年度の償却限度額として償却する方法です。

    なお、リース資産の取得価額に残価保証額に相当する金額が含まれている場合は、会計基準の取扱いと同様に、取得価額から残価保証額を控除した金額をリース期間にわたって定額で償却します。

    (注) 残価保証額とは、リース期間終了時のリース資産の処分価額が、契約において定められている保証額に満たない場合に、その満たない部分の金額を賃借人が賃貸人に支払うこととされている場合の保証額をいいます。

  3. 税務処理の許容
    会計上、原則法の処理、例外処理のいずれを採用したかにかかわらず、いずれの場合も、会計に沿った税務処理が認められます。
    その場合に、利息相当額についても、@利息法により配分する、A定額法により配分する、または、B利息相当額をリース資産に含めて償却する、以上のいずれの処理も認められます。

  4. 少額短期のリース取引や中小法人のリース取引
    リース会計基準に準拠した場合であっても、少額短期のリース取引については、オペレーティング・リース取引と同様の賃貸借処理が認められます。
    また、中小法人のリース取引については、そもそもリース会計基準に準拠することが法令上強制されるわけではないため、従来どおり賃貸借処理を採用することも想定されます。
    所有権移転外ファイナンス・リース取引の借手が賃貸借処理を行った場合であっても、法人税法上は、賃借料として損金経理をした金額が償却費として損金経理したものとして取り扱われることから、その賃借料の損金算入が認められます。
    その場合、申告調整は不要(減価償却明細書の提出も不要)です。

    法人税法上は、会計基準と異なり、賃貸借処理を認める例外規定は存在しませんが、賃借料として損金経理した場合には、 その金額は償却費として損金経理した金額に含まれると規定されているため、リース料がリース期間にわたって均等定額に発生するものであれば、そのまま損金の額に算入され申告調整も必要 ありません。

  5. 減価償却方法の相違による影響
    税務上の借手側の減価償却方法は、リース期間定額法に限定されていますが、会計基準の適用指針は、定額法、級数法、生産高比例法等のなかから企業の実態に応じたものを 選択適用するものとしています。
    したがって、会計上、定額法を選択した場合は、会計上の減価償却費が税法上の償却限度額と一致し、会計上、定額法以外の方法を選択した場合は、 会計上の減価償却費と税法上の限度額が一致しなくなるので、申告調整が必要となります。

  6. 消費税その他の取扱い
    (1)消費税
    消費税法上は、所有権移転外ファイナンス・リース取引は、少額リース資産であるか、 中小企業が行ったリース取引であるか等に関係なく全てが売買されたものとみなされ、売買があったものとして取り扱うため、 借手側がリース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間において、そのリース料総額を課税仕入として一括して仕入税額控除を行います。
    その場合、契約において利息相当額が明示されていれば、その利息相当額は非課税仕入れになり、契約において明示されていない場合は、 利息相当額も含めたリース料総額が課税仕入れとして取り扱われることになります。

    オペレーティング・リース取引は、従来どおり賃貸借取引として取り扱われるため、その課税期間における賃借料の合計額を課税仕入としてリース期間にわたって仕入税額控除を行います。

    (2)租税特別措置法
    租税特別措置法上の取扱いについても、法人税法と同様に、所有権移転外ファイナンス・リース取引は売買取引に係る方法に準じた処理となります。

    例えば、中小企業基盤強化税制のように、リース料総額の60%について税額控除が認められているものについては、通常の売買取引と同様に、100%の税額控除が認められ、リース税額控除制度が廃止されることになります。

    ただし、特別償却制度や圧縮記帳制度については認められません。
    所有権移転外ファイナンス・リース取引はリース期間が終了しても所有権が移転しないため、所有権移転ファイナンス・リース取引のように売買そのものとはみることはできず、売買とみなされる取扱いであるからです。

    (3)固定資産税
    固定資産税については、従来どおり、リース会社が納税します。

    (4)適用時期
    改正後の法人税法、消費税法および租税特別措置法の適用は、平成20年4月1日以後締結したリース契約から適用されます。
    税務上は、既存のリース契約については、引き続き従来どおりの賃貸借処理によります。


  7. 貸手側の処理
    貸手は、リース料の総額からリース物件の原価等を差引いた金額である「リース利益額」のうち、実質的に受取利息と認められる部分の金額 (リース利益額の20%相当額)を利息法により収益計上し、それ以外の部分の金額をリース期間にわたって均等額により収益計上することができます。




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