平成12年度法人税に関する改正点 
 


  1. 有価証券関係の改正

  2. 同族会社の留保金課税の特例の創設

  3. ソフトウエアの資産区分等の改正

  4. 情報通信機器の即時償却制度(パソコン減税)の延長

  5. 中小企業投資促進税制の延長

  6. 中小企業の貸倒引当金の特例制度の廃止

  7. 貸倒引当金勘定への繰入限度額の改正

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有価証券関係の改正


平成12年度税制改正において、有価証券の譲渡損益の計算、売買目的有価証券・デリバティブ取引等の期末時価評価及びヘッジ処理の導入、外貨建取引に関する規定の整備等が行われ、平成12年4月1日以後開始する事業年度から適用されることになりました。

  1. 有価証券の譲渡損益の計上時期及び計算方法

    (1)有価証券を譲渡した場合には、原則として約定日(取引日)において、譲渡対価の額から原価の額を控除した金額を益金の額又は損金の額に算入することとされました。
    なお、平成12年4月1日から平成14年3月31日までの間に開始する各事業年度においては、売買目的外有価証券の譲渡について、そのすべてを引渡基準によっているときは、引渡基準による処理が認められます。

    (2)有価証券の範囲に、銀行・信託会社等の貸付債権信託の受益権(信託契約時の受益者が委託者であるものに限ります。)及び外国法人以外の者が発行する譲渡性預金証書をもって表示される金銭債権が追加されました。

    (3)有価証券の一単位当たりの帳簿価額は、売買目的有価証券、満期保有目的等有価証券及びその他有価証券の区分ごとに、かつ、その銘柄を同じくするものごとに、移動平均法又は総平均法により算出することとされました。

    (4)有価証券の取得価額等についても所定の改正が行われました。

  2. 有価証券の期末評価方法

    (1)売買目的有価証券は期末において時価評価し(時価法)、洗替方式により評価損益を益金の額又は損金の額に算入することとされました。

    (2)売買目的外有価証券は、その期末帳簿価額をもって期末評価額とされます(原価法)。
    ただし、償還期限及び償還金額の定めのあるもの(転換社債を除きます。)は、帳簿価額と償還金額との差額のうち当期に配分すべき金額をその帳簿価額に加算又は減算した金額を期末帳簿価額(いわゆるアキュムレーション又はアモチゼーションをした金額)とし、その加減算額を益金の額又は損金の額に算入することとされました(償却原価法)。

    (2)上場有価証券の評価方法として認められていた低価法が廃止されました。
    なお、改正事業年度の直前の事業年度において計上した低価法の評価損の額については、取戻益を計上しないこととされています。

  3. 有価証券の空売り等

    (1)期末において未決済となっている有価証券の空売り、信用取引、発行日取引又は売買目的有価証券の取得を目的とする有価証券の引受けがある場合には、期末に決済したものとみなして算出した利益の額又は損失の額に相当する金額を、洗替方式により益金の額又は損金の額に算入することとされました。

    (2)信用取引及び発行日取引(いずれも買付けに限ります。)により有価証券を取得した場合(繰延ヘッジ処理の適用を受ける場合を除きます。)には、取得の時に対価として支払った金額とその取得した有価証券の時価との差額は、その取得の日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入することとされました。
    この場合、その取得した有価証券は、時価で取得したものとされます。

  4. デリバティブ取引

    (1)期末において未決済となっているデリバティブ取引(外貨建資産等の金額の円換算額を確定させる先物外国為替契約等に基づくもの及び金利スワップ取引等のうち一定の要件を満たすものを除きます。)がある場合には、期末に決済をしたものとみなして算出した利益の額又は損失の額に相当する金額を、洗替方式により益金の額又は損金の額に算入することとされました。

    (2)デリバティブ取引により金銭以外の資産を取得した場合(繰延ヘッジ処理の適用を受ける場合を除きます。)には、取得の時に対価として支払った金額とその取得した資産の時価との差額は、その取得の日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入することとされました。
    この場合、その取得した資産は、時価で取得したものとされます。

  5. ヘッジ処理

    (1)繰延ヘッジ処理

    資産(売買目的有価証券を除きます。)若しくは負債の価額又は受払が予定される金銭の額の変動に伴って生ずるおそれのある損失の額を減少させるためにデリバティブ取引等を行った場合(デリバティブ取引等を行った日に、ヘッジ目的で行った旨並びにヘッジ対象資産等及びデリバティブ取引等の明細等を帳簿書類に記載した場合に限ります。)において、事業年度終了の時までの間においてヘッジ対象資産等につき譲渡等がなく、かつ、ヘッジとして有効であると認められるときは、デリバティブ取引等の利益額又は損失額のうちヘッジとして有効である部分の金額は、その事業年度の益金の額又は損金の額に算入しないこととされました。

    (2)時価ヘッジ処理

    売買目的外有価証券の価額の変動(期末時換算法により円換算を行う償還期限及び償還金額の定めのある有価証券の価額の変動のうち為替相場の変動に基因するものを除きます。)により生ずるおそれのある損失の額を減少させるためにデリバティブ取引等を行った場合(デリバティブ取引等を行った日に、ヘッジ目的で行った旨及びヘッジ対象の売買目的外有価証券を時価評価する旨並びに売買目的外有価証券及びデリバティブ取引等の明細等を帳簿書類に記載した場合に限ります。)において、事業年度終了の時までの間にヘッジ対象である売買目的外有価証券の譲渡がなく、かつ、ヘッジとして有効であると認められるときは、その売買目的外有価証券の時価と帳簿価額との差額のうちデリバティブ取引等の利益額又は損失額に対応する部分の金額は、損金の額又は益金の額に算入することとされました。

  6. 外貨建取引

    (1)長期外貨建債権債務の期末時円換算は、従来の取得時換算法に加え期末時換算法も適用できることとなり、期末時換算法により換算した金額と帳簿価額との差額は、洗替方式により益金の額又は損金の額に算入することとされました。

    (2)先物外国為替契約等により外貨建資産等の金額の円換算額を確定させた場合(その先物外国為替契約等の締結の日に、円換算額を確定させた旨及び先物外国為替契約等の明細等を帳簿書類に記載した場合に限ります。)には、その外貨建資産等を先物外国為替契約等の為替相場により円換算するとともに、為替予約差額は、外貨建資産等の決済日の属する事業年度までの各事業年度に配分し、益金の額又は損金の額に算入することとされました。
    ただし、その外貨建資産等が短期外貨建資産等に該当する場合には、為替予約差額を一括計上することができます。


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同族会社の留保金課税の特例の創設


次の法人について、2年間(平成12年4月1日から平成14年3月31日までの間に開始する各事業年度に限ります。)の措置として、同族会社の留保金課税を適用しない特例が設けられました。

・設立後10年以内の新事業創出促進法の中小企業者に該当する会社

・新事業創出促進法の認定事業者(主務大臣の認定を受けた計画に係る新事業分野開拓を実施する者)

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ソフトウエアの資産区分等の改正


平成12年4月1日以後に取得するソフトウエアについては、無形固定資産に該当するものとされ、複写して販売するための原本となるソフトウエアについては3年、それ以外のものについては5年(開発研究用は3年)で償却することとされました。

平成12年3月31日以前支出 平成12年4月1日以後取得
資産区分
購入・委託は繰延資産
自社開発は資産計上不要
減価償却資産(無形固定資産)
償却期間 5年 複写販売原本は3年、それ以外は5年
研究開発用は3年
償却方法 定額均等償却 定額法(残存価額ゼロ)
少額基準 20万円未満 10万円未満
3年一括償却 選択不可 選択可能

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情報通信機器の即時償却制度(パソコン減税)の延長


青色申告書を提出する法人が取得し事業の用に供した取得価額が100万円未満のパソコン等の一定の情報通信機器については、その取得価額の全額を取得事業年度の損金に算入することができます。
その適用期限が延長され平成13年3月31日までとなりました。


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中小企業投資促進税制の延長


中小企業者等が取得し事業の用に供した、一定の機械装置、器具備品、車両等について、一定の要件のもとに、取得価額の30%の特別償却又は取得価額の7%の特別税額控除の選択適用ができます。
その適用期限が延長され平成13年5月31日までとなりました。


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中小企業の貸倒引当金の特例制度の廃止


公益法人等又は協同組合等を除き、中小企業の貸倒引当金の一括評価に係る繰入限度額を16%増しとする措置が廃止されました。
なお、中小企業の貸倒引当金の繰入限度額の計算を法定繰入率によることを認める措置については引き続き適用があります。
改正後の規定は、平成12年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用され、同日前に開始した事業年度分の法人税については、改正前の規定が適用されます。

※別表十一(一)の記載の仕方

この改正に伴い、別表十一(一)の様式が次のように改められました。
  1. 「大法人の場合の当期繰入限度額(7)」欄→「当期繰入限度額(7)」欄
  2. 「中小法人の場合の当期繰入限度額(8)」欄→「公益法人等・協同組合等の当期繰入限度額(8)」欄
なお、中小法人の平成12年4月1日以後に開始する事業年度にあっては「当期繰入限度額(7)」欄に記載し、中小法人の同日前に開始した事業年度にあっては「公益法人等・協同組合等の当期繰入限度額(8)」欄に記載します。


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貸倒引当金勘定への繰入限度額の改正


民事再生法の施行に伴い、個別評価に係る貸倒引当金の繰入れが認められる事実について、和議法の和議の認可決定に代えて民事再生法の規定による再生計画認可の決定が、また、和議法の規定による和議開始の申立てに代えて民事再生法の規定による再生手続開始の申立てが追加されました。
平成12年4月1日以後にされる民事再生法の規定による再生手続開始の申立てに係る再生事件について適用され、同日前にされた和議法の規定による和議開始の申立てに係る和議事件については、従来どおり適用されます。


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