令和5年度税制に関する改正点 
 

M E N U

令和5年度税制改正に関する法律が令和5年3月28日に成立し、次の改正が行われました。

<法人税に関する改正点>
  • 中小法人の法人税率の特例の延長
  • 研究開発税制の見直し(法人税・所得税)
  • オープンイノベーション促進税制の見直し
  • 企業による先導的人材投資に係る税制措置
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    <所得税に関する改正点>
  • NISA制度の抜本的拡充・恒久化
  • スタートアップへの再投資に係る非課税措置の創設
  • 極めて高い水準の所得に対する負担の適正化
  • 特定非常災害に係る損失の繰越控除の見直し
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    <相続税・贈与税に関する改正点>
  • 資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築
  • 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直し
  • 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直し
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    <消費税に関する改正点>
  • 小規模事業者に対する納税額に係る負担軽減措置
  • 一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置
  • 少額な返還インボイスの交付義務の見直し
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    最終更新日:2023.8.8

    T O P 令和5年度税制改正点 令和4年度税制改正点

    中小法人の法人税率の特例の延長


    中小法人の年800万円以下の所得に係る法人税率を15%に軽減する措置が2年(令和7年3月31日までに開始する事業年度まで)延長されました。


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    研究開発税制の見直し


    試験研究を行った場合の税額控除制度(研究開発税制)は、次の3つの税額控除制度によって構成されています。

    1. 一般試験研究費の額に係る税額控除(一般型)

    2. 中小企業技術基盤強化税制による税額控除(一般型との選択適用)

    3. 特別試験研究費の額に係る税額控除(オープンイノベーション型)

    研究開発税制について、次の見直しが行われました。

    1. 一般試験研究費の額に係る税額控除制度(一般型)の見直し

      (1)税額控割合の見直し

      試験研究費割合(※1)が10%以下の場合で、増減試験研究費(※2)が9.4%を超える場合の特例が、 増減試験研究費割合が12%を超える場合の特例に見直された上、税額控除割合の上限を14%(原則:10%) とする税額控除割合の上乗せ特例の適用期限が3年延長されました。
      また、税額控除割合の下限が1%(改正前:2%)に引き下げられました。

      <税額控除率>
      ・増減試験研究費割合が12%超の場合
       11.5%+(増減試験研究費割合−12%)×0.375(上限14%)

      ・増減試験研究費割合が12%以下の場合
       11.5%−(12%−増減試験研究費割合)×0.25(下限1%)

      ※1 試験研究費割合=試験研究費÷平均売上金額
        平均売上金額=当期と過去3年間の売上高の平均

      ※2 増減試験研究費割合=(試験研究費−比較試験研究費)÷比較試験研究費
        比較試験研究費=過去3年間の試験研究費の平均

      (2)控除上限額の見直し

      控除上限額(原則:調整前法人税額の25%)について、変動型控除上限の特例(控除上限額の上乗せ・減算特例)が創設された上、 試験研究費割合が10%を超える場合の控除上限額の上乗せ特例の適用期限が3年延長されました。

      @変動型控除上限の創設

      <控除上限額に上乗せ又は減算される金額>
      ・増減試験研究費割合が4%を超える場合
      調整前法人税額×(増減試験研究費割合−4%)×0.625(最大:5%)

      ・増減試験研究費割合が▲4%を下回る場合
      調整前法人税額×{0%−(増減試験研究費割合の絶対値−4%)×0.625} (最小:▲5%)

      A上乗せ特例の延長

      試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合における税額控除率の特例及び 控除上限額の上乗せ特例の適用期限が3年延長されました。

      B基準年度比売上金額減少割合が2%以上等の場合における控除上限額の5%上乗せ特例は、 令和5年3月31日の適用期限の到来をもって廃止されます。

    2. 中小企業技術基盤強化税制の見直し

      (1)税額控除割合の見直し

      増減試験研究費割合が9.4%を超える場合の特例が増減試験研究費割合が12%を超える場合の特例に見直された上、 税額控除割合の上限を17%(原則:12%)とする税額控除割合の上乗せ特例の適用期限が3年延長されました。

      ・増減試験研究費割合が12%を超える場合
      12%+(増減試験研究費割合−12%)×0.375(17%上限)

      (2)控除税額上限の見直し

      増減試験研究費割合が9.4%を超える場合の控除上限額の上乗せ特例が増減試験研究費割合が12%を超える場合の控除上限額 (原則:調整前法人税額の25%)の上乗せ特例に見直された上、その特例及び試験研究費割合が10%を超える場合の 控除上限額の上乗せ特例の適用期限が3年延長されました。

      <控除上限額に上乗せされる金額>
      ・増減試験研究費割合が12%を超える場合
      調整前法人税額×10%

      ・上記以外で試験研究費割合が10%を超える場合
      調整前法人税額×(試験研究費割合−10%)×2(最大:10%)

      (3)基準年度比売上金額減少割合が2%以上等の場合における控除上限額の上乗せ特例は、令和5年3月31日の 適用期限の到来をもって廃止されます。

    3. 特別試験研究費の額に係る税額控除制度(オープンイノベーション型)について、 「特別試験研究費の額」の範囲の見直しが行われました。

      (1)本制度の対象となる特別試験研究費の額のうち、特定新事業開拓事業者(研究開発型スタートアップ企業) との共同研究等の費用が特別試験研究費へ追加され、その税額控除割合が25%とされました。

      経済産業大臣の認定を受けたファンドからの出資を受けているなどの要件については撤廃されます。

      <特定新事業開拓事業者>
      次の要件を全て満たす研究開発型スタートアップ企業で、経済産業大臣から証明書の交付を受けたもの

      ・未上場の株式会社であること

      ・特定の企業グループに属さない者であること

      ・設立の日以後の期間が15年未満(10年以上の場合は営業損失が生じているもの)の会社であって、 直前の事業年度の確定した決算において、研究開発費の額の売上高の額に対する割合が10%以上であるもの

      ・ベンチャーファンド又は研究開発法人の出資先であること

      (2)先導的研究開発人材に係る費用として新規高度研究業務従事者に対する人件費の額が追加され、 その税額控除割合が20%とされました。

    4. 各制度共通の試験研究費の額の範囲の見直し

      (1)製品の製造又は技術の改良、考案もしくは発明に係る試験研究のために要する一定の費用

      現行では、性能向上を目的としない「デザインの考案に要する費用」は 対象外になる一方で、 性能向上を目的としない「考案されるデザインに基づき行う設計及び試作に要する費用」は対象になっています。

      性能向上を目的としないことが明らかな「開発業務の一部として考案されるデザインに基づき行う設計及び試作に要する費用」 についても対象外とされました。

      (2)対価を得て提供する新たな役務の開発(サービス開発)に係る試験研究のために要する一定の費用

      現行では、自動的にビッグデータを新たに収集する場合であること等が必要ですが、 「既存のビッグデータ」を活用する場合も対象とされました。

    この改正は、令和5年4月1日から令和8年3月31日までの間に開始する各事業年度に適用されます。


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    オープンイノベーション促進税制の見直し


    オープンイノベーション促進税制とは、一定の条件下でスタートアップ企業への投資額の25%の所得控除(損金算入) を受けられる制度(適用期限は令和6年3月31日まで)です。

    現行では、新規発行株式の取得に限られていましたが、M&Aによる発行済株式の取得も対象となりました。

    今回の改正は、既存企業によるスタートアップ企業に対してのM&Aを後押しするものですが、 スタートアップ企業の成長に真に資するM&Aを対象とすべきという観点から、 M&A後のスタートアップ企業の成長要件も新たに設定されています。


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    企業による先導的人材投資に係る税制措置


    企業の成長を先導する人材の創出を後押しするため、以下の措置が講じられます。

    1. 学校教育における企業先導人材の育成

      大学や高等専門学校、一定の専門学校を設置する学校法人の設立費用として企業が支出する寄附金について、 個別の審査を受けなくても全額損金算入が可能となる枠組みを設け、早期に寄附金の募集を可能とし、 スピード感を持って学校経営を進めるための一助とします。

    2. 先導的研究開発人材の活用・育成

      高度な研究人材への投資を促し、国際競争に資するハイレベルでオープンなイノベーションを促進する観点から、 博士号取得者や、一定の経験を有する研究人材を外部から雇用することに対し、研究開発税制における優遇措置を創設します。
      具体的には、これらの人材の人件費を対象とする新たな類型をオープンイノベーション型に設け、  一般の試験研究費よりも高い税額控除率(20%)と、別に計上される税額控除上限(10%)の適用を可能とします。

    3. デジタル推進人材の育成

      企業がDXを進めて行く上で不可欠なデジタル人材の育成・確保を促すため、DX投資促進税制において、 人材育成・確保等に関連する事項を要件化する等の見直しを行います。


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    NISA制度の抜本的拡充・恒久化


    「資産所得倍増」「貯蓄から投資へ」の観点から、NISA制度について、非課税保有期間を無期限化するとともに、 口座開設可能期間については期限を設けず、恒久的な措置とします。

    一定の投資信託を対象とする長期・積立・分散投資の枠(「つみたて投資枠」)については、年間投資上限額を120万円に拡充します。

    上場株式への投資が可能な現行の一般NISAの役割を引き継ぐ「成長投資枠」を設けることとし、「成長投資枠」については、 年間投資上限額を240万円に拡充するとともに、「つみたて投資枠」との併用を可能とします。

    非課税保有限度額を新たに設定した上で、1,800万円とし、「成長投資枠」については、その内数として1,200万円とします。

    この改正は、令和年6年1月から適用されます。


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    スタートアップへの再投資に係る非課税措置の創設


    保有する株式を売却し、@自己資金による創業やAプレシード・シード期のスタートアップ(※)への再投資を行う際に、 再投資分については譲渡益に課税を行わない措置が創設されました。

    ※プレシード・シード期のスタートアップとは、エンジェル税制の対象企業である未上場ベンチャー企業のうち、 @設立5年未満、A前事業年度まで売上が生じていない又は売上が生じているが前事業年度の試験研究費等が出資金の30%超、 B営業損益がマイナス、等という状況であることを指します。

    この改正は、令和5年4月1日以降の再投資について適用されます。


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    極めて高い水準の所得に対する負担の適正化


    税負担の公平性の観点から、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化のための措置が設けられました。

    1. 株式の譲渡所得のみならず、土地建物の譲渡所得や給与・事業所得、その他の各種所得を合算した 所得金額(基準所得金額)から特別控除額(3.3 億円)を控除した金額に、22.5%の税率を乗じた金額が納めるべき所得税の金額を超過した場合に、 その超過した差額を追加的に申告納税することとします。

    2. 基準所得金額の計算上、スタートアップに再投資する場合の優遇税制の適用を受けた株式譲渡益やNISA制度の 非課税所得は対象から除外することとし、また、政策的な観点から設けられている特別控除を控除した後の所得金額とします。

      @ 通常の所得税額

      A (合計所得金額 − 特別控除額(3.3億円))× 22.5%

      Aが@を上回る場合に限り、差額分を申告納税

    この改正は、令和7年度分以後の所得税について適用されます。


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    特定非常災害に係る損失の繰越控除の見直し


    特定非常災害に係る損失(雑損失)の繰越控除制度について、次の措置が講じられました。

    1. 特定非常災害による「住宅・家財等の損失」について、1年間で控除しきれない損失額(雑損失の金額)の 繰越控除期間を5年(改正前:3年)に延長します。

    2. 特定非常災害による「純損失」につき、以下の場合には、次の損失額について繰越控除期間を5年(改正前:3年)に延長します。

      @保有する事業用資産等のうち、特定非常災害に指定された災害により生じた損失(特定被災事業用資産の損失)の割合が10%以上である場合、
      ・青色申告者についてはその年に発生した純損失の総額
      ・白色申告者については被災事業用資産の損失の金額と変動所得に係る損失の金額の合計額

      A特定被災事業用資産の損失の割合が10%未満の場合には、特定被災事業用資産の損失による純損失の金額

      ※純損失:不動産所得、事業所得、譲渡所得及び山林所得の金額の計算上生じた損失(総収入金額から必要経費 (災害による事業用資産の損失を含む)を引いたもの)の金額のうち、損益通算をしてもなお控除しきれない部分の金額

    この改正は、令和5年4月1日以後に発生する特定非常災害について適用されます。


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    資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築


    1. 相続時精算課税制度の見直し

      相続時精算課税制度について、暦年課税の基礎控除とは別途、110万円の基礎控除を創設するとともに、 相続時精算課税で贈与を受けた土地・建物が災害により一定以上の被害を受けた場合に相続時にその課税価格を 再計算するという見直しが行われます。

      この見直しは、令和6年1月1日以後に受けた贈与について適用されます。

    2. 暦年課税における相続前贈与の加算の見直し

      暦年課税において贈与を受けた財産を相続財産に加算する期間を相続開始前3年間から7年間に延長し、 延長した4年間に受けた贈与のうち総額100万円までは相続財産に加算しない見直しが行われます。

      令和6年1月1日以後に受けた贈与について、加算期間の延長が適用されます。 (令和9年1月以降、加算期間は順次延長。加算期間が7年となるのは令和13年1月以降)


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    教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直し


    教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について、節税的な利用につながらないよう所要の見直しを行った上で、 適用期限が令和8年3月31日まで3年延長されました。


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    結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の見直し


    結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について、節税的な利用につながらないよう所要の見直しを行った上で、 適用期限が令和7年3月31日まで2年延長されました。


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    小規模事業者に対する納税額に係る負担軽減措置


    免税事業者がインボイス発行事業者を選択した場合の負担軽減を図るため、納税額を売上税額の2割に軽減する激変緩和措置を 3年間講ずることとします。

    これにより、業種にかかわらず、売上・収入を把握するだけで消費税の申告が可能となることから、簡易課税を選択する場合より、 事務負担も大幅に軽減されることとなります。

    負担軽減措置の適用に当たっては、事前の届け出を求めず、申告時に選択適用できます。

    この改正は、免税事業者がインボイス発行事業者となったこと等により事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる者を対象とし、 令和5年10月1日(インボイス制度の開始)から令和8年9月30日の属する課税期間まで適用されます。


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    一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置


    インボイス制度の実施にともなう、事務負担を軽減する観点から、基準期間(前々年・前々事業年度)における 課税売上高が1億円以下である事業者については、インボイス制度の施行から6年間、1万円未満の課税仕入れについて、 インボイスの保存がなくとも帳簿のみで仕入税額控除を可能とします。

    (注)基準期間における課税売上高が1億円超であったとしても、前年又は前事業年度開始の日以後6か月の期間の 課税売上高が5,000万円以下である場合は、特例の対象とします。


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    少額な返還インボイスの交付義務の見直し


    事業者の実務に配慮して事務負担を軽減する観点から、少額な値引き等(1万円未満)については、返還インボイスの 交付を不要とします。


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