<混沌からの秩序ーマンダラ>


インドを始め東洋で神聖視されてきたマンダラは円形と方形の組み合わせで多重世界を描いています。
大世界の中に小世界がありさらに小世界の中に微小の世界が存在するという自己相似性があり、フラクタル図形に通ずるところがあります。
マンダラは「輪円具足」と訳されますが、輪円とは丸いものがぐるぐると中心を起点として回転している状態をあらわします。2次元的絵画表現を超えた動的要素をもつことがマンダラの特徴です。


日本で古くから知られているマンダラは胎蔵マンダラと金剛界マンダラです。
胎蔵マンダラは真言宗の本堂では正面に向かって右に掛けられており、「理」の世界、物質的な世界をあらわします。
金剛界マンダラは左に掛けられ、「智」の世界、精神的な世界をあらわします。
真言密教の開祖空海は、「理」ー客体的なものと「智」ー主体的なものは同体であり不可分であるとして、その二元的価値を総合し、統一した世界を両界マンダラとして表現しました。


マンダラは、スイスの心理学者C.G.ユングの一連の研究により西欧でも注目されました。
ユングは、マンダラが心理的な分裂ないし錯乱の状態においてあらわれることや精神病の治療にマンダラが作用することを発見しました。
また、マンダラの円イメージと中心性が心的状態の無秩序と混乱に秩序を与えるため、本能的な衝動からマンダラは描かれ、またどの時代のどんな場所にあらわれたものでも基本的な一致がみられることを指摘しました。


混沌とした複雑な世界の中から見い出された秩序を直感的に絵画的に表現したものがマンダラで、数学的にコンピュータでとりだしたフラクタル図形であるということができますが、いずれの図形も心惹かれる美しさをもっています。


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