<自然をシミュレートーフラクタル>



ベノア・マンデルブローは1975年に「フラクタルなオブジェ.形.偶然.次元」という本をを出版し、自然の海岸線や樹木の形、雪の結晶などをシミュレートするための概念として「フラクタル」という概念を提案しました。

フラクタル図形は普通の図形と異なり整数でないハウスドルフ次元(フラクタル次元)と呼ばれる次元の図形であり、また「自己相似」とよばれる性質をもっています。

「自己相似」とはある図形の部分が全図形の縮小された像になっているもので自然をはじめ複雑なものにはこの性質をもったものが数多く存在します。


フラクタル物体は自己相似で、遠くから見ても、近くから見ても、同じように見えます。
接近して拡大して見ると、遠くからは構造がなく思えた部分が全体を概観した形と同じに なるのです。
山や木、海岸線や雪の結晶などの自然構造は不規則で自己相似形で、全体の一部分をどんどん拡大してみても最初のものとほとんど同じものが現われます。
そのほかシダ、ブロッコリー、カリフラワーなど自然界にはフラクタルの例が多く見うけられます


最近フラクタルは様々な分野の人々から注目されていますが、これは観測技術の進歩などで自然の中にあるフラクタル図形をとりだすのに成功したこと、また、なによりもコンピュータの発達により多くの人が美しいフラクタル図形を楽しむことができるようになったことが要因として考えられます。


幾何学的直感に恵まれたマンデルブローはフランス有数のエリート校に入学しましたが、当時フランスの学界に強い影響力をもった「ブルバキ」ー優秀な数学者を会員とするグループで、純粋で正統的な数学を志向し「視覚」にたよる幾何学を排除する立場をとるーの形式主義から逃れるため、フランスを脱出しアメリカに渡りました。
アメリカではIBMの研究者として経済学的問題(綿の価格変動など)の解決に当たっていましたが、秩序などとは全く縁のなさそうな不規則なデータの中に(スケーリング的な)秩序がひそんでいることを、パターンや形に関する彼独特の直感で見い出していました。

海岸線の問題を扱った論文「英国沿岸の長さはどれだけあるか?」では、長さ、深さ、厚さなどを測る従来のユークリッド式測定法では自然の不規則で複雑さの本質を捉えることができないとして、今までとちがった次元という概念に目を向けました。
曲がりくねった海岸線やギザギザやでこぼこなどの性状を測る方法として、「不規則な度合」を整数の次元を超えて分数的次元で捉えることを思いついたのです。
自然界の不規則性のパターンを異なったスケールでみた場合、「不規則さの度合」は一定であることが多く、マンデルブローの考え方(幾何学)は自然を在るがままに映しだす新しい幾何学として注目されることになりました。
マンデルブローはこの新しい幾何学を「くだけた石」という意味のラテン語「フラクトゥス」から「フラクタル」と名付けました。


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