<単純な方程式からカオスがみえた>


ロバート・メイという生態学者は生物の個体数を予測するモデルを次のようなロジステイック方程式を用いて数値実験をおこないました。

実験の結果、その関数のなかのある係数が一定の価を超えると個体数の動きのパターンは 周期性を失って予測不能になっていくことを発見しました。
方程式自体はひとつの簡単なものであるにもかかわらず予測ができなくなってしまうのです。


横軸にパラメータ値(λ)をとり縦軸に個体数の値(X)をあらわすグラフの上に、ロジステイック方程式の結果(各パラメータ値に対する個体数)を記入していくと、パラメータ値が低いときは少しづつ上昇していく一本の線を描き(周期1の軌道)、パラメータ値がある値を越えると線が二つに分かれます(周期2の軌道)。パラメータ値が増加するにつれ分岐は倍になり、また倍になるという過程(倍周期)を繰り返すのです。
これらの分岐は4、8、16、32...とだんだんスピードをあげて起こりますが、ある点をすぎると 規則性のない混沌状態(カオス)になり、グラフのその領域は塗りつぶされてしまいます。
さらにパラメータ値を増加させると、突然奇数の3とか7の規則的な周期があらわれ(奇数周期の窓)、再び倍周期の分岐が起こり、新しいカオスが生じます。

アメリカのロスアラモス国立研究所のファイゲンバウムは、周期が十分に大きい場合、縦軸と横軸を一定の倍率で拡大するとすべての分岐の構造が同じ(相似)ものとなることを証明しました。 この拡大倍率はファイゲンバウム数といわれ、他の周期倍増をする力学系にもあらわれる普遍的な数です。


MENU / NEXT